フラットな稜線がまるで伏せたお皿のように見えるのが由来の皿ヶ嶺です。
皿ヶ嶺連峰県立自然公園、愛媛森林浴88ヶ所53番。
石鎚山、石墨山、香川の小豆島、八島などが火山活動を行っていた1500万年前、皿ヶ嶺も火山としての活動を行っていました。
凝灰岩の層が取り巻くように形成されていることから、成層火山があったと推定されています。
明治・大正頃の資料では、“亀ヶ城山”、または“亀の峯山”の名で登場し、逆に“皿ヶ嶺”はあまり見られません。
特に南麓の久万地方で“亀ヶ城山”と呼ばれていました。
竜神平には竜宮が城という城址があったと云われ、昭和初期の資料にも城跡が見られる旨の記述があるものがあります。
けれど、現在は城跡を匂わすような遺構は見当たりません。
“皿ヶ嶺”が一般的となったのは国土地理院の地形図に採用されて以降です。
※西隣にある引地山を“亀ヶ城山”としている資料もあります。
登山口は東温側、久万側に多数あります。
昭和以前は久万側の六部堂から登るルートがよく利用されていました。
現在は東温側の上林森林公園からがもっぱら利用されています。
東温市上林と久万高原町上畑野川を繋ぐ林道が上林峠トンネル開通以降、全面舗装化されました。
上林森林公園まで手軽にアクセスできるようになったからです。
松山市内からも30分ほどで標高950mまで高度を稼ぐことができます。
※冬季は上林峠トンネルの前後が車止めで封鎖され、車両通行止めになっています。
集落の民家が無くなった場所から上林森林公園までの林道は除雪も行われません。
通行は可能ですが、毎冬、下り坂で脱輪・衝突する4WD車が絶えませんのでチェーンを準備してお出かけください。
上林森林公園手前にある“水の元”は皿ヶ嶺に磨かれた美味しい水をいただける水場です。
清水を生かしたそうめん流しが夏休み限定で開かれています。
トイレ、駐車場のほか避難小屋もあります。
上林森林公園は、東温市が管理する森林公園で、避難小屋、キャンプ場、遊歩道、多目的広場が整備されています。
天然のクーラー「風穴」は夏でも岩の穴から冷気が吹き出す名所で、真夏はドライアイスのような白い霧が漂うほどです。
穴蔵ではヒマラヤ原産の青いケシ=”メコノプシス”が栽培されています。
風穴のそばに登山口があります。
山頂へは約1時間半~2時間。
ブナの巨木が林立する原生林に拓かれた登山道で自然を愛で歩き、ひとまずたどり着くのが山頂下にある竜神平です。
皿ヶ嶺連峰の縦走路に位置する竜神平は麓からフラットに見える稜線部分です。
なだらかに広く開けていて、皿ヶ嶺湿地が形成されています。
湿原は貴重な植物も多い場所です。
日本の重要湿地基準2の“希少種、固有種等が生育・生息している”に選定されています。
ベニモンカラスシジミ、スジボソヤマキチョウ、アイノミドリシジミ、ウラクロシジミ。
マダラクワガタ、トサオサムシ、モンヒメマキムシモドキなどが生息していることが選定理由となっています。
そのほか、ササユリやシコクカッコソウなどの高山植物も多く存在します。
温暖化などの影響により、水量の減少、ササの浸食などにより、湿原自体は年々縮小傾向にあります。
また、湿原内への立ち入りは制限されていないため、特に写真撮影などによる踏み荒らしが荒廃に拍車をかけています。
近年、ボランティアらによって湿原を復元する試みも始まりました。
竜神平には赤い屋根が目印の愛大竜神平小屋(別名・皿ヶ嶺ヒュッテ)があります。
昭和35年、愛媛大学教授だった故・山内浩氏が山岳部、学術探検部らの学生たちとともに建設した山小屋です。
通年利用可能です(管理人は不在)。
利用料代わりに500円ほどの寄付をお願いしています。
指呼の距離にある山頂はブナの原生林の先にあります。
竜神平~山頂間は2ルートあり、どちらからでも登れます。
ぐるっと周遊して戻るのがおすすめです。
竜神平にも周遊路があります。
山頂は久万側(南)に向け、パノラマが拡がっています。
三角点は山頂から北に250mほど離れた、10mほど標高も低い場所にあります。
きちんと調査されていない地図やガイドブックの中に、この三角点を山頂として“▲”マークを付けているものもあります。
真の山頂の標高が測量されていなかった昭和初期頃までは、多くの登山者が三角点を目指し、真の山頂は見晴台のような位置づけでした。
往年の登山者の記念碑が三角点の近くに埋設されているのもそのためです。
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